令和5年度 男女共同参画フェスタ 「ひとり親に無理ゲーをさせているのは誰だ?―支援の現場からみる社会の歪みー」

開催日・開催時間

令和5年6月25日(日)10時~12時

対象

浜松市民及び市に登録している女性団体・あいゆうねっと登録団体

事業報告

あいホールでは、6月23日~29日の男女共同参画週間を市民にアピールし、男女共同参画社会について理解促進を行い、浜松市民と市の女性団体、男女共同参画推進団体(あいゆうねっと)が交流し理解を深める場として男女共同参画フェスタを毎年開催しています。今回は、静岡県内でひとり親支援をされているシングルペアレント101代表の田中志保さんをお招きし、「ひとり親に無理ゲー※をさせているのは誰だ?―支援の現場からみる社会の歪みー」と題して、ひとり親支援の現場から見える社会の問題について講演いただきました。その後グループワークと共有会で、参加者どうしが意見交換をし、社会の一員として自分たちにできることは何かを考えました。
(※「無理ゲ―」は、俗に、難度の高すぎるコンピューターゲームのこと。転じて、実現不可能だったり、達成が非常に困難だったりする物事のたとえ。)

第一部:講演
田中さんは、ひとり親当事者になった経験の中で、ひとり親になる前後の多大なる困難(離婚調停、就活、子どもの保活)の中で「私が史上初のシングルマザーではないのになんでこんなに制度が整ってないの?!」と疑問を感じ、他のシングルマザーに聞いても同じように苦労していることを知ります。そこで、田中さんは、この問題を社会に知らせなければ!と決意。社会課題を解決する手法を2年学び、ひとり親の調査を実施。その結果をプレシングルマザーヒントBOOK「私たちの選択と決断~離婚、子どもと漕ぎ出す新たな未来VOL.1」という形で自費出版されました。
調査を通じて、ひとり親の抱える問題は、個人の問題ではなく、社会の問題であると確信し、ひとり親で安心して暮らせる社会の実現のために、ひとり親支援活動の団体シングルペアレント101を立ち上げられたそうです。

田中さんの講演の内容をご紹介しましょう。
ひとり親が困難を強いられる原因はどんなことにあるのでしょうか?
田中さんは「令和5年度版男女共同参画白書」などのデータを用いて、私たちの住む社会は、女性の就業における正規雇用の割合が男性と比べて低く、賃金も男女差が大きい、家事育児・介護の主な担い手は女性であり、意思決定の場面では常に男性が多くを占め、女性の意見が反映されにくい社会であることを示されました。理解してくれる夫がいればなんとかなるが、この社会の中で女性だけを取り出した状態がシングルマザーの生きづらであり、社会構造を変えていかなければ、解決できない問題であることをお話しされました。

私たちの意識はどうでしょう?
「女性は子どもができても就業継続する方が良い」という考え方は更新されていますが、「女性は男性よりも低い賃金で良い」「家事育児・介護をするのは女性」という意識は更新されていないのではないでしょうか?
女性が男性と同じように扱われなければ、いつまでもひとり親世帯は生きづらいままということになります。
私たちの意識の更新も問題の解決には重要です。

田中さんが、食料配付会の現場で聞いたという「自分の住んでいるところを避けて参加している」という当事者の声がありました。困難な状況にあっても、まわりを気にして安心して支援を受けられない、支援や相談を受けることに敷居の高さを感じている当事者の存在があるというお話が印象に残りました。
そして「ひとり親に無理ゲーをさせているのは誰だと思いますか?」という問いを最後に、講演を締めくくられました。

第2部:グループワーク・全体共有会
「えんたくん(直に書き込みができるダンボール製の卓)」を使い、第一部の講演を聞いての感想、意見、質問などを参加者が思い思いに書きました。えんたくんに書き込む面白さもあいまって、活発な意見交換が行われました。
参加者の意見の中には、「ひとり親の困難は自己責任として片づけることができない問題であり、社会構造やジェンダーの問題に起因することに気づかされた」「ひとり親に無理ゲーをさせているのは、社会であり、社会の一員である自分もその一端であることに気づいた」などがありました。
ひとり親でも安心して暮らせる社会にするためには、当事者への情報の届け方、支援の方法、税金の有効的な使い方を考える教育の必要性など、様々な具体的な意見が出され参加者全体で共有しました。

内閣府のデータによると、今や10組に1組がひとり親であり、ひとり親の約半数の等価可処分所得が貧困線(127万円以下)という調査結果もあります。自己責任では片づけられない問題であることを田中さんの講演やグループワークで感じていただけたのではないでしょうか。

今回は、一般市民及び支援者、教育関係者、市議会議員、女性団体などの参加があり、さまざまな視点からひとり親の問題を考えることができました。今後も社会的課題を的確にとらえた男女共同参画フェスタを開催していきたいと思います。