令和6年度 あいホールフォーラム 脚本家 吉田恵里香トークイベント -「はて?」の先の未来をひらく-

開催日・開催時間

令和7年3月8日(土)13時~14時30分

対象

浜松市在住・在勤の方・在学の方

事業報告

あいホールでは市民の皆さんに「男女共同参画」や「ジェンダー平等」について考えてもらう機会を提供するため、毎年著名人を招いた講演会・イベントを開催しています。
今年度は、多くの方々の反響を呼んだNHK連続テレビ小説「虎に翼」の脚本家吉田恵里香さんをお迎えしました。「虎に翼」は、日本の女性法曹の先駆者「三淵嘉子」をモデルとした主人公 寅子とそれを取り巻くさまざまな人にスポットをあてた情熱あふれる作品です。

 

 

 

 

 

 

 

NHK連続テレビ小説「虎に翼」は主人公の口癖「はて?」が流行語大賞にノミネートされたように、SNSやネットニュースでたびたび話題になった作品でした。そのため今回のあいホールフォーラムは1月15日の申込日の午前で満席になってしまうほどでした。市民の皆さまの注目度を実感しました。

さて、イベント当日です。
「虎に翼」の主題歌 米津玄師さんの「さよーならまたいつか!」が流れる中、フリーアナウンサー原田裕見子さんが登場、吉田恵里香さんをステージ上にお迎えし、トークセッションがスタート。

「虎に翼」の脚本を書くことになったいきさつ、法の下の平等を記す憲法14条をドラマの軸においたこと、主人公の寅子の口癖「はて?」はどんな風に生まれたかなど、トークは序盤から興味深い内容に。
スクリーンには、ドラマの一場面が写され、さまざまなシーンを思い出しながらのトークが続きました。
思い出のシーンのひとつには、寅子が生理痛に苦しむ場面もありました。吉田さんはドラマ「生理のおじさんとその娘」の脚本もかかれていますが、朝ドラで「生理」を描くことは、ご自身を含めドラマ制作者皆の思いでもあったということです。
浜松市は生理を気軽に学ぶイベントを開催している他、公共施設のトイレで生理用品を無償配布する「生理用ナプキンディスペンサー」の設置をすすめています。イベントでも浜松市の生理に関する取り組みを紹介させていただきましたが、生理を当たり前のものとして描かれた吉田さんの思いとも共通するものがあるように思いました。

スクリーン上は、女性初の弁護士誕生の祝賀会で女性の地位の低さと不平等について怒る寅子のスピーチの場面、戦後、寅子が新憲法について家族に説く(弟の直明に「大黒柱になんてならなくていい。そういう時代は終わったの」)場面、優秀な男性のみならず優秀な女性に地位を奪われる怖さを抱える男性の生きづらさを小橋(寅子の学友であり同僚)が口にする場面などが次々と映し出されました。これらの印象的なシーンについて吉田さんから発せられた言葉がまた心に響きました。
「怒ることは大事、怒ってもいい」
「女性の『何か』が上がる時、男性の『何か』が下がるわけではなく、一緒に底上げしていくもの」
「小橋だから説得力のある言葉がある」など。
さらに話題は、家族のケア的仕事を担っていた花江について、「花江を偉人のパートナーのように描きたくなった」という吉田さん。寅子と花江が同級生から家族、そして夫婦のようになっていく中で、外で働く寅子と家を守る花江を対等な関係に描こうとしたことは、花江の立場に自分を重ねる人々の心を打ちました。
スクリーン上は「恋せぬふたり」(アロマンティック・アセクシュアルの男女の共同生活を描いた吉田さん脚本のドラマ)の写真が映し出されました。セクシュアル・マイノリティは、今生まれたものではなく、ずっーと昔からあるもので「虎に翼」でも寅子の人生の中で普通に出会う人たちであったのではないかという思いを語ってくださいました。
いよいよイベントも終盤。ここからは参加者の質問(予め募集したもの)にも答えていただきました。
原田さん:「虎に翼」の反響はどのようなものでしたか?
吉田さん:感想を言ってくれる方々が、自分話をしてくれることが多く、寅子をはじめ登場人物のセリフで自分の気持ちが楽になったと言ってもらうこともありました。
原田さん:こころに残る名セリフがたくさんありました。メモってしまうくらい。
吉田さん:「虎に翼」に関しては、きれいなセリフだけにしない、ストレートな言葉を紡ぐことを心がけました。行間で気持ちを読むようなことにならないように、伝えたいことをはっきりとさせたかったです。
原田さん:脚本制作上のおもしろエピソードはありますか?
吉田さん:優未(寅子の娘)と夜中にキャラメルを食べるシーンでは、脚本には書かなかった「歯磨きのシーン」が足されたていました。歯磨きしないで寝てしまうなんで・・・という世間の目を気にしたのでしょうか(笑)

 

 

 

 

 

あっという間に1時間半が過ぎ、4月から始まる吉田さん脚本のアニメーションの「前橋ウィッチーズ」をご紹介しイベント終了となりました。
「はて?」と立ち止まり、人と対話する。声をあげられなくても、どんなに小さくても自分なりのアクションをしよう!という気持ちで会場を後にした方も多かったのでではないでしょうか。
参加者からのアンケートには、
・吉田さんがトークの中で「家庭と仕事の両立、その両立っていう言葉が嫌い。ただタスクが増えているだけじゃん」とおっしゃっていたことにすごく共感しました。
・男女格差について女性に着目されることが多い中男性の苦悩について取り上げたり、「自分らしさ」について問題提起をしたり、現在の社会問題について根本に切り込む吉田さんのお話に感銘を受けた。
など、本当にたくさんの感想や意見をいただきました。
あいホールは、男女共同参画とジェンダー平等を推進するために、皆さまに興味をもってもられるようなイベントを今後も開催していきます。
最後に本イベントのステージ上のお花は、日ごろあいホールをご利用いただいている生け花の会「菊菱会」に飾っていただきました。ありがとうございました。